December 2, 2019
著者:Howard D. Hopper, FPE, グローバル規制サービスマネージャー
寄稿:Adam Barowy, リサーチエンジニア
2015年、最新の蓄電システム(ESS)に対応するため、米国の消防法における火災安全要件の策定作業が開始されました。この取り組みでは、屋内外の大規模なリチウムイオンバッテリーESS設置に際し、潜在的な危険を軽減することに焦点が当てられました。バッテリーモジュールの熱暴走が重大な火災や爆発を引き起こす可能性があることが、ESS設置で最も懸念される点でした。とりわけ、その火災の制御や抑制、爆発の軽減方法は実証されておらず、その当時、保護ソリューションの開発に用いる研究や火災性能データが不足していました。
2018年の国際消防基準およびNFPA 1消防基準では、バッテリーESSの熱暴走や火災類焼といった予測困難な状況に対処するため、サイズ(ユニット内の電気容量)、隔離、最大許容量(空間内の総電気容量)の要件が導入されました。これらの要件によって、ESS設置のサイズや電気エネルギー密度が制限されました。ただし、これらの基準では、認可された試験所による大規模な火災および故障状態の試験の結果を用いて規制当局の承認を得た場合、より大容量のESS設置やより短い離隔距離でのESS設置が可能とされました。この試験では、1つのESSユニットで発生した火災が隣接するユニットに類焼せず、バッテリールーム内で抑えられることを示す必要がありました。
UL SolutionsはESS業界と消防当局のニーズに応えるため、2017年11月にバッテリーESSの火災試験実施方法を開発し、UL 9540A1『蓄電システムにおける熱暴走火災類焼評価試験方法』を発表しました。 この要求事項は、熱暴走を起こしたバッテリーESSの火災特性を評価するために起案されました。生成されたデータは、蓄電システムの設置に必要な、火災および爆発防護についての判断に使用されることを目的としています。また、このデータは、単一の蓄電システムユニットによる火災類焼の危険性や火災緩和方法に関して、国際消防基準(IFC)およびNFPA 1の目的を満たしています。
UL 9540Aには、セルからモジュール、ユニット、最終的には設置レベルに至るまで、段階的に規模が大きくなる火災試験が含まれていました。各試験では、熱暴走特性や火災類焼を評価するための具体的なデータが生成されましたが、特定の合否判定基準は設けられていませんでした。その代わり、試験データ一式が消防当局に提供され、バッテリーESS設置の適合性を評価するために使用されました。
消防法が改訂され、UL Solutionsがさらに経験を重ねてバッテリーESSの火災類焼試験や熱暴走特性、および規制当局が必要とするデータを取得するとともに、UL 9540Aが相次いで更新され、2018年1月に第2版が、6月に第3版が発行されました。バッテリーESSの大規模な火災試験に関する技術的基盤が確立されたことを踏まえ、UL Solutionsは2019年にStandard Technical Panel 9540に参画し、二国共同版の試験方法を開発しました。 ANSI/CAN/UL 9540Aの第4版は2019年11月12日に発行され、ANSIおよびSCC(Standards Council of Canada)の認可規格となっています。
UL 9540A 第4版で取り入れられた主な変更点は以下の通りです。
- セル、モジュール、ユニットレベルの試験において、段階的に大規模になる試験が不要となるタイミングが特定され、実質的に試験の受け入れ基準が確立されました。この記事に添付されているフローチャートには、UL 9540A1の試験手順について、詳しく記載されています。
- ユニットレベルの試験の強化により、屋内床設置型蓄電システム(BESS)、屋外地面設置型BESS、屋内壁掛け型BESS、および屋外壁掛け型BESSの具体的な試験基準が含まれるようになりました。これらのタイプのシステムはすべて、IFC、NFPA 1、NFPA 855の最新版における特定の設置要件に準拠しています。
ESSの設置要件の変更、火災科学の進展、ESS業界および規制当局のニーズを反映し、UL 9540Aは今後も進化を続けるでしょう。UL 9540A の追加情報については、www.UL.com/batteriesをご覧ください。
ウェビナー:蓄電システムと設備に関するカナダの法規および規格
このオンデマンドウェビナーでは、カナダの蓄電システムや設備に関する法規および規格の概要について解説しています。また、UL Solutionsの専門知識を活用して、カナダでの蓄電システムおよび設備の規制遵守と市場参入をどのように加速させているかについても説明しています。